徹底分析シリーズ それでいいのか 麻酔中の人工呼吸
人工呼吸と循環の連関―自発呼吸と異なる陽圧管理が影響を及ぼすが,予後との関連の研究はまだこれから
戸田 雄一郎
1
Yuichiro TODA
1
1岡山大学病院 麻酔科蘇生科
pp.930-933
発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101623
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おそらく,ほとんどの麻酔科医は,気管挿管をして確認が終われば,人工呼吸モードに変更して麻酔中の呼吸管理を行っているだろう。通常の成人患者であれば,1回換気量500mL,呼吸回数12回/min,呼気終末陽圧(PEEP)は0~5 cmH2Oくらいの設定だろうか。
筆者が研修医の頃は,「患者の肺の状態を把握できるように,手でバッグをもめ!」と言われ,そこに人工呼吸器があるのに使わせてもらえないこともしばしばだった。しかしこの経験は,どのくらいバッグを加圧すれば,どの程度肺が膨らんで,どのくらいの頻度が1分当たり10回なのかを体に刻み込んでくれた。そして時折,安全弁の閉めすぎや脳外科の止血確認のValsalva試験などによって,呼吸が血圧の変動にかかわることを,教科書からではなく,身をもって教わった。
現在,特定の人工呼吸モードがほかの呼吸モードよりも優れている,というエビデンスは,少なくとも麻酔中の健常成人に関しては存在しない。したがって本稿では,どのように呼吸器を設定したらよいかではなく,人工呼吸がどのように循環に変調をきたすかを理解することを目的とする。
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