徹底分析シリーズ ニューロモデュレーションと鎮痛
―大脳皮質運動野刺激(MCS)による難治性疼痛治療―2回の手術が必要だが合併症は多くない
野村 貞宏
1
Sadahiro NOMURA
1
1山口大学医学部 脳神経外科
pp.582-586
発行日 2012年6月1日
Published Date 2012/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101548
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
感覚神経伝導路(求心路)に損傷が加わると,同部位から中枢に向かう神経活動は異常に増強され,疼痛として自覚される。一方,遠心路である運動神経には求心路を抑制する成分が存在し,これを刺激して異常興奮した求心路を抑制する。これが大脳皮質運動野刺激motor cortex stimulation(MCS)の原理である。
MCSが最も適するのは求心路遮断痛(中枢痛)のなかでも視床痛で,原疾患には高血圧性脳内出血をはじめとする脳卒中が多い。治療対象者には薬効能試験drug challenge test(DCT)を行い,薬物種による効果の違いから中枢痛であることを診断する。
次いで試験用刺激電極を頭蓋内に留置し,1~2週間の試験刺激を行う。有効例には植込み用刺激電極を頭蓋内に,刺激装置を胸部皮下に植え込む。大脳皮質運動野を術中に正しく同定することが重要である。治療効果は視覚的評価尺度visual analogue scale(VAS)を用いて患者が自己評価する。50%以上の疼痛軽減例が約2/3の症例で認められる。
本稿では,MCSとその対象疾患である求心路遮断痛(中枢痛)について解説する。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.