症例検討 神経筋疾患患者の麻酔
巻頭言
松本 美志也
1
1山口大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生・疼痛管理分野
pp.395
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101509
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- 文献概要
本症例検討では,筋強直性ジストロフィー,Guillain-Barré症候群,多発性硬化症,Parkinson病を取り上げる。
この4例は,いずれも運動障害を呈する疾患であるが,その病態はさまざまで,筋強直性ジストロフィーが骨格筋の変性,Guillain-Barré症候群が末梢神経の脱髄,多発性硬化症が中枢神経の脱髄,そして,Parkinson病が中枢神経細胞(黒質緻密層のメラニン含有細胞)の変性である。好発年齢と頻度(10万人当たり)は,筋強直性ジストロフィーが20~30歳で5人,Guillain-Barré症候群が40歳頃で1~2人,多発性硬化症が30歳頃で8~9人,Parkinson病が50代後半から60代で100~150人である。筋強直性ジストロフィーは常染色体優性遺伝で,Parkinson病の約5%が遺伝性である。
Guillain-Barré症候群は比較的わかりやすい経過をとるが,筋強直性ジストロフィーとParkinson病は発症が緩徐なため,診断が遅れがちである。多発性硬化症は突然発症するが,その症状が軽い場合は,治療しなくても症状が徐々に回復することがあり,適切な治療を受けていないケースが多々ある。したがって,診断がついていないこれらの疾患の患者を麻酔する可能性があることを,われわれは念頭においておく必要がある。
麻酔科医も,成人以降に発症する神経筋疾患の基本的知識を横断的に整理し,麻酔の術前診察の段階で神経筋疾患が疑わしい患者に出会った場合は,神経内科医にコンサルテーションできる診察能力を身につけておきたい。
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