低体温と全身麻酔と代謝，そして腎機能―低温環境で体温維持に働く非ふるえ熱産生 全身麻酔は褐色脂肪組織などの熱産生を阻害する

体温を一定に保つことは，正常な生体機能を維持するうえできわめて重要で，体温の変化は，さまざまな生体機能に影響を与える。そのため，何らかの原因で体温が低下すると，生体は体温を維持するための調節を行う。しかし，手術室のような比較的寒冷な環境で全身麻酔を受けると，核心温を保つのに十分な調節機能を果たせず，覚醒時に比べて大きく体温が低下する。

　本稿では，体温低下時の体温調節反応として重要な熱産生反応，すなわちエネルギー代謝の応答と，それに対する全身麻酔の影響について述べる。さらに，腎機能が低体温によりどのように影響されるかについても述べる。