症例検討 硬膜外麻酔・鎮痛の合併症
巻頭言
落合 亮一
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1東邦大学医学部 麻酔科学第一講座
pp.897
発行日 2011年9月1日
Published Date 2011/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101337
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- 文献概要
ちょうど,40歳の時に手術を受けた。
まだ,PCAポンプが普及する前で,簡単なバルーン式の持続硬膜外鎮痛が施行された。ところが,1日に何度も疼痛の波が押し寄せるではないか。鎮痛薬が足りない!
そこで,自ら局麻薬を硬膜外カテーテルから追加注入。これぞ,本当の自己調節鎮痛(PCA)であった。
その時の発見は,追加注入したブピバカインの効果発現の速さである。毎回,腕時計の秒針を見ながら待つことしばし。30秒以内に,灼けるような痛みが嘘のように消えていく。なるほど,持続注入に追加投与という方法が妥当であることを痛感した次第。
この時には,尿閉という合併症も経験したが,手術の1週間後には無事復職できていたのも,硬膜外鎮痛によって自信がもてたことが大きい(痛みに怯えることなく,リハビリに専念できるのですよ!)。
かように術後痛は,患者にとって一大事であり,硬膜外麻酔・鎮痛の重要性には何の疑いもない。尿閉という合併症も,痛みに比べれば無視できる程度の問題であった。
しかし,より重篤な合併症も忘れてはならない。その焦点は,不可逆的な神経損傷にあるといえるが,痛みに震える患者は目の前の鎮痛に心を奪われているので,不幸な結果を生まないためにも,私たち麻酔科医が果たさなければならない責任は大きい。
硬膜外麻酔・鎮痛の合併症に正しく対処するためには,正しい知識とテクニックが必要である。
本症例検討には,多面的なアプローチがなされ,すぐにも活用すべきtipも盛りだくさんである。是非,患者の安心と安全のためにも,熟読をお勧めする。
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