徹底分析シリーズ 素朴な疑問―これにて13件落着!
2件目―術前の動脈血酸素分圧はどのように評価するか
丸山 一男
1
MARUYAMA, Kazuo
1
1三重大学大学院医学系研究科病態解明医学講座 麻酔集中治療学
pp.210-212
発行日 2011年3月1日
Published Date 2011/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101154
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●術前の呼吸器の評価
動脈血酸素分圧は,術前の呼吸機能評価の一環として測定される。呼吸機能の評価は,術後呼吸器合併症*1の発症を予測したり,呼吸練習などの効果を術前に判定することが目的である。呼吸器系の術前評価とは,術式,問診,身体所見,検査であり,検査には,動脈血ガス分析,胸部単純X線写真,スパイロメトリーがある。一般に,単独の検査結果だけで術後呼吸器合併症を予測することはできず,複数の要因を加味して判断する必要がある。なかでも,麻酔時間>2.5時間,周術期の胃管挿入,cough test陽性*2,上腹部の皮膚切開,年齢>65歳,喫煙≧40パック/年,1秒量(FEV1.0)<1L, が危険因子として重要である。動脈血酸素分圧は,その他の因子に含まれ,動脈血酸素分圧75mmHg未満が危険因子である(表1)1,2)。
術前から動脈血酸素分圧が低下している場合,それが病的な異常であれば,身体所見やスパイロメトリーの結果にも異常が表れる。したがって,動脈血酸素分圧の低下を認めたら,他の呼吸器合併症発症予測に関する所見を集め,術後肺炎スコア,呼吸不全スコア(表2)3)を算出する。さらに,禁煙や術前呼吸練習を行い,呼吸機能の改善を図る。呼吸機能改善の指標として,動脈血ガス分析,スパイロメトリーを行う。このようにして,低酸素血症の原因となる病態の治療を行い,改善を待って手術に臨む4)。
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