連載 インタビューデータ分析の質向上のためのNVivo活用術・1【新連載】
NVivoの概要とデータを取り込む作業まで
萱間 真美
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.128-138
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201615
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インタビューデータには力がある。当事者にしかできない言い回し,当事者だけが知る言葉を探し当て,ぴったりフィットするデータとともに差し出したときの,聴衆や読み手の沈黙。その時間は,見知らぬ誰かの言葉が自分の体験の上にゆっくりと重ねられ,理解の扉を開けるための時間だ。全く同じ体験はなくても,類似の体験や感情を手掛かりにして,自分の体の感覚として追体験する瞬間である。そのとき,これまでの言葉は役に立たなくなり,人は沈黙するのだと思う。
このような瞬間をもたらすことのできる概念は,転移(移転)可能性が高い概念である。質的データを分析する人の目標は,このような概念を,たとえ1つでもよいから,抽出することといってもよい。この作業が「現象を記述することで,理解を深める」という質的研究の目的である。
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