徹底分析シリーズ 大血管手術後の脳・脊髄合併症
脳保護作用への期待:麻酔薬とその他の薬物
沖田 寿一
1
,
川口 昌彦
1
Toshikazu OKITA
1
,
Masahiko KAWAGUCHI
1
1奈良県立医科大学 麻酔科学教室
pp.118-122
発行日 2010年2月1日
Published Date 2010/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100857
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大血管手術においては,動脈硬化や脳血管障害などのリスクファクターを有する患者が多いだけでなく,手術操作自体が脳傷害発生の大きな因子となる。特に,大動脈弓置換術などでは,一時的に脳循環を停止させたり,人工的な脳灌流が必要となるなど,手術症例のなかでも最も脳障害発生のリスクが高い。本稿では,大血管手術時に使用する麻酔薬やその他の薬物にさらなる脳保護効果を期待できないか,どのような薬物を使用すればよいか,という点について述べる。
しかし残念ながら,現時点では大血管手術での脳保護効果を示す薬物のエビデンスはなく,どのような薬物をどのように使用すべきかという指針はないのが現状である。古い教科書などに載っている迷信的な薬物の使用を迷う場合も多いのではないだろうか。少なくとも脳障害のメカニズムと麻酔薬や各種薬物の関連性を理解することで,予防法や治療法の手がかりに,また麻酔管理上での薬物選択の一要因になればと考える。
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