症例検討 高齢者の大腿骨頸部・転子部骨折
糖尿病患者:深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症とともに,冠動脈疾患,自律神経障害にも注意
田中 裕之
1
Hiroyuki TANAKA
1
1広島市立安佐市民病院 麻酔・集中治療科
pp.46-50
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100569
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症例
85歳の女性。身長138cm,体重42kg。自宅の玄関を踏み外し転倒,受傷。人工骨頭置換術が予定された。入院より72時間が経過している。15年前より糖尿病を指摘されており,グリベンクラミドを処方されているが,夫の話によると,飲んだり飲まなかったりだという。術前検査で血糖値240mg/dL, HbA1c 8.1%であった。血液検査上,白血球10100/μL,ヘモグロビン値10.8g/dL,BUN 35mg/dL,クレアチニン2.2mg/dL,D-ダイマー4.0μg/mLであった。心電図上,Ⅱ,Ⅲ,aVFでQ波を認めた。
【経過】
人工骨頭置換術が行われた。手術台に移動する前に,少量のフェンタニルを投与した。等比重ブピバカイン2.5mLによる脊髄くも膜下麻酔と,プロポフォールによる鎮静(TCI:1~2μg/mL)とした。鎮静は体動が抑制できる程度とした。プロポフォールを増加すると血圧が低下するため,適宜エフェドリンを投与した。手術時間は1時間30分,出血量は400gであった。
手術が終了し,体位変換後,モニターをみると,徐脈(心拍数30bpm)になっていた。頸動脈を触診したが,触知不能であった。直ちに人工呼吸と気管挿管を行い,心マッサージを開始した。アドレナリン1mgを投与したところ,心拍数100bpm(R-Rの不整,心房細動あり),頸動脈が触知可能となった。血圧は83/65mmHgであった。
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