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遭遇しやすい典型ケース
45歳女性,0妊0産.30歳から38歳まで月経困難症・子宮内膜症のため近医産婦人科に通院しlow-dose estrogen/progestinによる治療を受けていた.その後,転居や仕事が忙しくなったなどのため産婦人科受診が途絶えていた.最近になって下腹部痛,下腹部膨満感を自覚し近くの総合病院を受診した.超音波検査で卵巣腫瘍を認め卵巣癌が疑われたため精査加療目的に紹介となった.
初診時の診察所見では,経腟超音波にて12cm大の囊胞内に充実部を伴う腫瘍を認めた.腫瘍の可動性は不良であり,子宮や骨盤壁との癒着が疑われた.血液検査所見では,血算,生化学検査に特に異常値は認めなかったが,CA125が817U/mL, D-dimerが12.5μg/mLとそれぞれ高値であった.骨盤MRI検査では,左卵巣に長径12cm大の内部に充実成分を伴う囊胞性腫瘍を認め,子宮内膜症に由来する卵巣癌が疑われた.胸腹部造影CT検査では遠隔転移を疑う所見を認めなかったが,総腸骨領域および傍大動脈領域に腫大リンパ節を認めた.骨盤内静脈の血栓症や肺塞栓症は造影CT検査では認めなかった.下肢超音波検査を施行したところ,左ヒラメ筋静脈から大腿静脈遠位にかけて連なる深部静脈血栓症を認めた.経口血液凝固第Ⅹa因子阻害薬であるリバーロキサバン30mg/日の内服を開始した.初診から2週間目に開腹手術を行い,術中迅速病理で卵巣癌,明細胞癌の疑いと診断されたため卵巣癌根治術(腹式単純子宮全摘+両側付属器切除+骨盤内〜傍大動脈リンパ節郭清+大網部分切除術)を施行した.周術期の深部静脈血栓症への対策は,リバーロキサバンを手術開始24時間前に中止とし,手術終了4時間後から未分画ヘパリン1万単位/日の持続点滴を開始し,術後2日目朝に中止とした.同時に術後2日目朝よりリバーロキサバン15mg/日の内服を開始とした.経過中,肺塞栓症などの症候性静脈血栓塞栓症は発症しなかった.
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