徹底分析シリーズ 心不全に挑む
小児心臓外科における循環管理:並列循環を中心に
北堀 和男
1
,
村上 新
1
Kazuo KITAHORI
1
,
Arata MURAKAMI
1
1東京大学医学部附属病院 心臓外科
pp.1098-1101
発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100479
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先天性心疾患の形態異常は多岐にわたるが,外科治療の進歩により,左心低形成症候群のように以前は治療が非常に困難であった疾患も,多段階手術を経て救命できるようになった。
先天性心疾患の大部分は,左心系と右心系の間に短絡血流を有する短絡性疾患である。正常心は,体静脈→右房→右室→肺動脈→肺静脈→左房→左室→大動脈と一方向性の循環,つまり“直列循環”であるが,短絡を有する先天性心疾患では左心系と右心系の分離が完全でない“並列循環”となることが多い(図1)。
大動脈弁狭窄のような非短絡性疾患を除いて,短絡性先天性心疾患における血行動態は根治術が完了するまで並列循環で維持される。並列循環では,肺血流量(Qp)と体血流量(Qs)のバランスが,肺循環,体循環の血管抵抗によって規定される点が重要であり,非短絡性先天性心疾患と異なる管理を要する。
例えば,単心室症のように左右両方向性の短絡が生じる疾患では,総合的な肺体血流比(Qp/Qs)の多寡にかかわらず,解剖学的異常に起因する心房や心室レベルでの右左短絡によって生じるチアノーゼは不可避である。動脈血酸素飽和度(SaO2)が低いからといって,正常心同様に酸素投与を行うなど肺血流を増加させる管理を行えば,体血流が減少し末梢循環不全に陥る一方,肺血流は増加し,容量負荷に対する予備力の乏しい新生児では容易に心不全,心停止に陥る。
先天性心疾患は複雑で難解である場合も多いが,肺循環の調整という観点から循環をとらえると理解しやすい。本稿では,単心室症を例に,並列循環の管理を解説する。
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