症例検討 よくある症例の麻酔
風邪をひいていたのですがという症例:起こりうる合併症の予測とその対応策を万全に
山木 良一
1
,
小松 久男
1
Ryoichi YAMAKI
1
,
Hisao KOMATSU
1
1東大阪市立総合病院 麻酔科
pp.60-62
発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100013
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症例
4歳の男児。鼠径ヘルニアに対してヘルニア根治術が予定された。過去3か月の間に,急性上気道炎と発熱のため,2度同手術が延期されている。術前回診で咳と軽度の鼻汁を認めたため母親に確認したところ,「先週は風邪で発熱していたけど,近医でお薬をもらってから熱は下がっています。もう,2回も延期されたので何とかしてください」と懇願された。主治医からも,「明日予定通り手術をしてもよいか」と問い合わせがあった。
親の負担も考えどのように対応するか
今回提示された症例と類似した事例は,ある程度のキャリアを積んだ麻酔科医ならば何度か遭遇したことがあるだろう。風邪症状や発熱のために2度手術が延期されているとなればなおのこと,麻酔の可否の判断に苦慮するものと思われる。
子供が入院すると,比較的軽めの手術であっても親には相当の負担がかかる(コラム)。延期を繰り返され,今度こそはと思う保護者の心情はよくわかるが,このことが手術を行うか否かの判断に影響されるべきではない1)。また,麻酔を引き受けるとなると,手術室入室から退室までの安全を全うする義務がわれわれにはある。したがって,起こりうる合併症について予測し,その対策を立てて手術に望まなければならない。
本症例に対し自分ならどう対応するか,筆者が現在勤務している施設の現況を紹介してから述べたいと思う。
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