特集 呼吸器診療の悩ましい「分かれ道」—プロは何を選ぶか?
Ⅱ.疾患
肺高血圧症の分かれ道
永田 祐一
1
,
長岡 鉄太郎
1
1順天堂大学医学部呼吸器内科学講座
キーワード:
肺高血圧症
,
びまん性肺疾患
,
ニース分類
,
肺血管拡張薬
Keyword:
肺高血圧症
,
びまん性肺疾患
,
ニース分類
,
肺血管拡張薬
pp.447-454
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.243232680730030447
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ここが分かれ道
●本稿では,呼吸器診療で遭遇することが多い第3群PHを含む「肺病変を有するPH」を中心に解説する.
●PHの国際分類では,肺動脈の異常収縮に起因するPAHは第1群に,慢性肺疾患の進行に伴う肺血管床の減少に起因するPHは第3群に分類されるが,実際には両群の要素を併せもつPHが多く存在する.
●第1群のPAHに対しては,近年多くの肺血管拡張薬が開発され予後は著しく改善しているが,第3群の慢性肺疾患に伴うPHに対しては,これまで有効性が示された肺血管拡張薬は存在せず,ILDやCOPDなどの原因肺疾患に対する治療介入が主となる.
●一方で,慢性肺疾患に伴うPHのなかにも肺血管拡張薬の投与によって運動耐容能や肺循環動態が改善する集団が存在しており,近年そのような治療奏功群の臨床像も明らかになってきた.治療奏功群では予後が延長する可能性が示されており,奏功が期待できる症例に対する肺血管拡張薬を用いた治療機会を逃さないことが重要である.
●さらに,慢性肺疾患に伴うPHに対する肺血管拡張薬の選択肢も広がりつつある.従来の内服肺血管拡張薬に加え,近年ではILD-PHに対する有効性が示された吸入肺血管拡張薬も開発されており,適切な治療戦略を選択することが重要となっている.

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