研究室から
東京大学医学部薬理学教室
大塚 正徳
pp.261-262
発行日 1960年10月15日
Published Date 1960/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906155
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昨年ゲッチンゲン大学の薬理学教授レンドレ博士が来日されたとき,薬理学とは何かということが話題になつたことがある。レンドレ教授がどの様に定義されたかは,はつきりと記憶しないが,兎に角薬理学を定義することは非常にむずかしいという結論であつた。実際,新しい研究方法の長足の進歩に伴い,薬理学とその隣接科学である生理学或いは生化学との間に明確な境界をおくことは益々困難となると共に,薬理学自身の内容も新しい薬物の発見や新分野の導入によつて多岐多彩となつた。
臨床薬理学(或いは治療学)はさておき,実験薬理学に次の2つの方向を区別することが出来よう。その一つは新しいより優れた薬物を発見しようと直接的に努力する方向であり,他の一つは薬物の作用様式を研究し,更には薬物を用いて生体機構を探究しようとする方向である。現在,私達の教室の主な方向はむしろ後者であるが,前者の方向も教室の永い伝統であり,又後者の方向が前者に到達するより近道であるかもしれない。
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