巻頭言
基礎医学研究室の問題
佐藤 昌康
1
1熊本大学医学部生理学教室
pp.245
発行日 1958年8月15日
Published Date 1958/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906024
- 有料閲覧
- 文献概要
私は地方の大学の一教室の主任になつて僅かに約3年半になるが,その間,こうあればもう少し立派な教室となり,仕事もうまくできるであろうかと考える希望的条件をかいてみたいと思う。教室を隆盛にし,立派な仕事を生みださせる基礎的条件をかいてみるならば,第1には主任となる人の学問的熱意,才能,批判力,また人間的な魅力や教室運営の才能などがあげられるべきであろうが,これは要するに教授会における教授詮衡の問題であるから,これは自分で自身を批判することにして,今の問題から除外することにする。第2はいろいろな意味で有能な教室員をいかにして集めるかとゆうこと,第3は勿論設備費,研究費の問題であり,第4は研究者の補助的立場にある人を集めて,教室の運営,研究の進展を円滑にしうるかどうかとゆうことである。
有能な教室員をいかにして集めるかとゆう問題は,現在基礎医学の研究に志す人が減少して基礎医学の貧困を来しはしないかといわれていることとも相通じる。地方の大学においては生理学などとゆう地味な,然も尖端的な学問の研究に打ちこんでやろうとゆう人は医科出身者の中には殊に少いようである。そうかといつて単に学位を取得するだけの目的の人が集つても困ることがある。
Copyright © 1958, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.