研究室から
東邦大学高田研究室
高田 蒔
1
1東邦大学
pp.191-192
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905817
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「宇宙生物学」という全く目新らしい科学に,筆者の創始した絮数反応という定量法的血清反応を応用し,「対流圏放射腺」と名付けた前代未聞の高エネルギー性放射線の作用によつて生体内に生起するイオン化現象を,毎日健康男子の血液について測定を続けること既に満20年となつた。これまで延べ何万回採血したか,今では正確に数えることが出来ない。よくも頑張り続けたものだと吾ながらツクヅクと感心する。この研究は,生きている人間を精巧な一種の物理化学的装置と見做し,独得の方法を用いて新領域を開拓するものだけに,.最初のうちは日本の物理学者から異端者扱いをされ,言語に絶する妨害と非難を受けたのであつたが,今では誰一人として正面切つて反対しうる人は一人もいなくなつた。それは,この業績が着々とドイツやイタリアの学者の間に認められて来たからでもあろう。しかし。わが国内では,この重大の研究に温い手を差し述べて,物質的な援助を与えようとする篤志家は残念ながら,まだ一人も現われない。一番ひどいのは,絮数反応を公然と横領し,自分の姓名をつけ,自分の発見であるかのように見せかけて,しやあしやあと学界に発表している不徳漢すらある。これは臨床方面だけの応用であり,かつての竹馬の友でもあるので大目に見逃がしてやつてはいるが,陰でそれを非難しながら,面と向つて忠告をする人もいない。
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