巻頭言
基礎医学のこれから10年
浦口 健二
1
1東大医学部衞看基礎医学(Ⅰ)
pp.145
発行日 1957年8月15日
Published Date 1957/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905951
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終戦10年,もはや戦後ではない、といわれこの頃,基礎医学志望の若い研究者を得ることが最近むずかしくなつた、という訴えが関係者の間に高まり,基礎医学振興の必要性が本気で論議されはじめた。論点はいろいろあるが,このまゝでは10年さきの我国の医学が思いやられる,というのである。
世界の基礎科学の日進月歩の動向に敏感なのは若い真面目な研究者達であり,それだけに,研究の面で,意図するところと現実との喰い違いに何かと悩まされることが多い。この不安は,研究設備が老朽不備であれば一層強く,研究費がつまつてくるとなお深刻で,個人生活が不安定であればますます切実となる。一生をこの道にゆだねたものかどうか,岐路に立つて思い惑う時期を何時とハツキリいえないが,心的物的の不安は大学研究活動の中核,助手の時代には頂点に達する。今,研究機関そのものがどの程度の安定度をもつているかを判定する一助として,仮りに助手以下の研究全員を有給者(助手・奨学生)と無給者とに大別してみる。
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