特集 食中毒
"黄変米"の種類と中毒の性質
浦口 健二
1
1東京大学医学部藥理学教室
pp.53-55
発行日 1954年9月15日
Published Date 1954/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201461
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戦後に東南アジアを始め世界の凡そすべての米産地から我国に米が輸入されるに及んで屡々大量のカビ米が発生して,しかもそれが飯用に適しないというので種々問題を起している。所謂"黄変米"なる名称は新聞や議会方面でよく用いられているが,黄色乃至褐色を呈する変質米には種類が多く,寄生菌も必しも一定しない。その中で戦後の輸入米で初めて我国にはいって来て我国で有毒の可能性が強いと判定されて港々の倉庫に足どめされ,遂に配給から除外される所謂"黄変米"は農林省方面の呼び方に従えばタイ国黄変米,イスランジア黄変米等とそれぞれの名称をもつたもので,変質の模様,寄性菌の種類,産地等もいろいろである。我々研究者の間ではこの"黄変米"を一括して黄変米類似変質米と呼ぶことにしている。それは我国では戦前から黄変米なる特定の変質米が存在していて,この在来のいわば本来の黄変米との混同を避ける必要があるからである。戦前から我国各地に発生するものを狭義の黄変米とすれば,戦後の輸入米に発見される黄変米類似変質米は広義の黄変米と見ることが出来よう。
戦前からの黄変米は寄生菌がPenicillium toxicarium Miyakeで,東京農業大学植物病理の三宅市郎教授等によって昭和13年台湾米から分離され,その分布が裏日本を初めかなり広く我国内に及んでいる。
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