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ポメラート教授(1)
中井 準之助
1
1東大解剖学教室
pp.452-453
発行日 1956年12月15日
Published Date 1956/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905921
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Prof.Charles Marc Pomeratは組織培養殊に位相差顕微鏡映画を用いての研究では知る人が多い。テキサス大学医学部解剖学の先生でProfessor of Cytologyということになつている。写真(1)は昨年帰国してから迎えた私の誕生日に贈られてきたものである。3年前の昭和28年5月,単身テキサスに乗り込んで,組織培養研究室の前に立つた時,忙しそうに大股で現われて来た老人,アメリカの外科医や床屋の親爺が着る詰襟,半袖の白い上着に白ズボン,首からはストツプ・ウオツチを吊るした禿頭の人が,はじめて見るPomerat教授その人であつた。老人とは確かにその時得た第一印象に違いなかつたし,少くとも60歳以上であろうと感じた。到着早々,今夜7時から映画を見せるからと呼び出しを喰つて,外国からの見学者と共に10時すぎまで,のべつまくなしの映画と,それ以上に留まることのない説明に思わず溜息が出てしまつた。日曜とても朝は4時過ぎに研究室に現われたり,1日中研究室の中を動き廻り,皆を叱咤して廻るエネルギーに驚いたが,間もなくやつてきた教授の誕生日に未だ50歳前と知つて第一印象以来の謎が少し解けた気もした。去る5月,日本にやつて来られた時のこと,奈良見物の二日間を終えて京都に戻つて来た。見るものすべて800年前,1000年前。疲れたのも道理,吾々は既に数万年を歩きまわつたのだからと笑い乍ら,ホテルに来た。
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