今月の主題 消化・吸収の基礎と臨床
栄養素と酵素蛋白の吸収
酵素蛋白質の腸管吸収
村地 孝
1
1京大中検
pp.636-637
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207861
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はじめに
酵素蛋白質の腸管吸収力ま臨床的に問題になったきっかけは,いわゆる経口消炎酵素剤の投与の開始であろう1),古典的生理学の教えるところに従えば,蛋白質はすべて消化され,アミノ酸またはごく短いペプチドとして吸収されるべきであって,新生児期の上一部を除いては,高分子の蛋白質がそのまま哺乳動物の小腸粘膜を通過するなどということはありうべからざることとされていた.しかし,実験をしてみると,微量の蛋白質吸収が家兎やラットで証明される.このことは消炎酵素剤を販売する側には大へん都合のよい実験事実であり,また逆に異種蛋白質の体内導入という面からは危険性を予測させる事実でもある.極めて単純な実験系で酵素蛋白質の腸管収吸が実証されてからすでに十数年になるが2),その後の実験的観察によって,話はどうなっているのかということを解説したい.
表に,この主題をめぐって提起されそうな質間とそれに対する回答とを掲げてある.以下の各節はこの回答欄の補足説明のつもりでお読みいただきたい.
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