論述
ニコチンの呼吸作用
田中 潔
1
1鳥取大學醫學部藥理學教室
pp.123-126
発行日 1952年12月15日
Published Date 1952/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905686
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ニコチンほど多様の作用點をもつ藥物も珍しい。循環器に対する作用にしても,自律神經節の刺戟により心臓及び血管に対して正負兩様の影響を與えるのみならず,心筋及び血管筋に対する直接興奮作用もあり,更に中枢刺戟による血壓作用をも有し,その上Chemoreceptorに対しては最も鋭敏な藥として知られている等,循環系統に關係のある全身の殆どすべての作用點に作用するといつても過言ではない。
ニコチンの呼吸作用についてもそれに近いことがいえる。中枢,反射,末梢の三作用機轉がいずれも關係して一見複雑な様相を呈するのである。1930年まで疑われなかつた「小量で呼吸中枢の興奮,大量で中枢の麻痺」という簡單な説明は20年前に完全に捨てられたが,最近更に「過興奮性無呼吸」という新しい事実が發見されて,ニチコンの呼吸作用も一應全貌が明かになつたように思う。
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