特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
1.イオノトロピック受容体
1)陽イオンチャネル内蔵型
ニコチン受容体
村松 郁延
1
,
朱 軍
1
,
谷口 隆信
1
Ikunobu Muramatsu
1
,
Zhu Jun
1
,
Takanobu Taniguchi
1
1福井医科大学薬理学教室
pp.343-345
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901601
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ニコチン受容体は分子量300K以上の糖蛋白で,五つのサブユニットから構成されている。サブユニットとしては,αサブユニットに9種類(α1~α9),βサブユニットに4種類(β1~β4)の亜型が,それにγ,δ,εサブユニットが各1種類存在する。従って,組み合わせの違いにより多種類のニコチン受容体が生体に分布していることになる。シビレエイの電気器官や神経節接合部の骨格筋型ニコチン受容体は,2個のα1サブユニットと1個ずつのβ1,γ(ε),δサブユニットで構成されている。これに対し,神経型ニコチン受容体には,α2~α6,β2~β4サブユニットが2:3の割合で集合したもの(2α3β型)と,α7,α8またはα9サブユニットが5個集合した5α型のものがある。いずれのニコチン受容体も五量体である1,2)。
ニコチン受容体はチャネル機能を内蔵している3)。アセチルコリンなどのアゴニストが結合すると五つのサブユニットの中央に形成されたポアporeが開き,陽イオンに対する透過性が高まる。骨格筋型が主にNa,Kイオンを通すのに対し,神経型はNa,KイオンだけでなくCaイオンに対しても高い透過性を示す。アセチルコリン結合部位は受容体に2ヵ所あり,互いに影響し合っている。これがニコチン受容体での薬物の作用を複雑にしている原因の一つである。表1に代表的アゴニスト,アンタゴニストを示す。
Copyright © 1998, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.