特集 最新の予防接種
各論
日本腦炎ワクチンに就て
安東 淸
1
1国立予防衛生研究所一般検定部
pp.49-52
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201650
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我が国に於ける夏期伝染病の一つとして特に小児科領域で重視せられる神経疾患中,日本脳炎はその主なものの1つであつて,従来これの予防に就ては種々な方法が講ぜられて来たが殆んどその効果の認められたものはない。
譬えば,昭和21年以来我が国に進駐した米軍は,本病の伝播が蚊によつて行われると云う米国のHammon,Reeves等の説をとり挙げて極めて大規模な蚊の駆除或は防蚊網の設備等を行うと同時に,日本側にもこれ等の予防処置を殆んど強制的に行わせ,我が国全般にわたる蚊の駆除はかなり広般にしかも徹底的に行われたにもかかわらず,昭和23年には東京地方を初め全国的に日本脳炎患者の多発を見た事は周知の事実であり,その後も毎年蚊の発生時期にさき立つてDDTの撒布或は水溜りの除去等に就ては米軍の指示を待たず,環境衞生当局が膨大な費用と労力を惜しまず努力し続けているにもかかわらず,毎年少なからざる患者の発生を見ている現状であつて,一昨年来厚生省当局も更に日本脳炎に対する積極的予防対策としての日本脳炎ワクチンの人体応用についての研究に力を入れ,我々が作つた研究班に援助を与えられた事は誠に時宜に適した措置と云うべきである。
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