論述
根電位について
大谷 卓造
1
1京都大學・生理學
pp.94-100
発行日 1951年12月15日
Published Date 1951/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905621
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後根から脊髄にはいつてきた知覺性衝撃は,一部は後索や側索を通つて腦に向うとともに,一部は直接又は間接にその高さの前角の運動性ノイロンに到達し,これを刺戟して反射性衝撃の放出を起させる。したがつて,このとき前根に二本の誘導電極をおいて前根繊維の活動電位をしらべると,反射性衝撃に伴う兩相性のSpikeを容易に検出することが出來る。さてこの場合に前根の誘導電極のうちの一本を脊髄に極めて接近した部位(數mm以内)におき,他方は前根の脊髄から遠くはなれた部位においておくと,後根からはいつて來る1個の求心性衝撃によつて,Spikeのほかに緩徐に經過する陰性波(脊髄に近い誘導極が遠い極に對して陰性となる)が現われる。これを前根電位という。同じように,知覺性衝撃の送られてくる後根,またはその1つ上位又は下位の後根の上に2本の誘導電極を,1つは脊髄に近く,他は遠く離しておくと,やはり求心性衝撃が脊髄に送り込まれるのに引續いて緩徐な陰性波(脊髄に近い極が陰性)が現われる。これを後根電位という。
これらがはじめて發見されたのは前世紀のことであり(Gotch and Horsley,11),その後も脊髄の緩徐電位としてUmrath(19,20),Gasser(9,12)等が同じ起源の電位變動を根や脊髄表面から誘導し記録しているのであるが,根電位としてはじめて系統的に研究したのはBarron and Matthews(1)である。
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