論述
生物電氣發生論—膜説批判(3)
杉 靖三郞
1
1元東京大學生理學教室
pp.59-62
発行日 1951年10月15日
Published Date 1951/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905608
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10.いわゆる“熱電流”について
負傷電流の電動力は,正常部の温度が傷害されない程度に高まると,大きくなり,温度が降ると小さくなる。これははじめ骨格筋についてみられた(E. du Bois-Reymond 1848)。ついでHermann(1871)によつて同樣の實驗がおこなわれ,正常部のみが温度に對して,電動的効果を示し,負傷部の温度變化は,ほとんど影響がないという結果がえられた。これは,骨格筋の一部に負傷を與え負傷部と正常部とを油の中で誘導しながら,温度を變化させて電動的効果を測つたのであつた。
その後,Bernstein(1902)は,自分では實驗はしないで,Hermannの實驗的結果を借用して熱力學的論文"Untersuchung zur Thermodynamik"(Pflüger's Arch. 92,1910)という論文を書いて,彼の膜説の基礎づけをやつたのであつた。すなわち彼は,化學電池についての熱力學的考察から,化學的エネルギーと電氣的エネルギーとの關係の種々なる場合について論じ,(E=V+TdE/dT,Eは電氣的エネルギー,Vは化學的エネルギー),これを筋の場合にあてはめて考えた。そして,筋の正常部(膜の外側,中側,内側における濃淡電池として取扱つたのである。
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