報告
ささやき母音の音響分析に就いて
小林 禎作
1,2
1北海道大學應用電氣研究所
2北海道大學低温科學研究所
pp.223-228
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905580
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緒言
母音の解析的研究は古くから多くの人々に依つて行われ,その發聲機構については,H.V.Helmholtzによつて代表される共鳴説とL.Hermannらによる吹き鳴らし説とが論議されて來たが,兩者は唯見方の相違に基づくものであつて,聲帶の振動により發せられた咽喉音が口腔及びその附屬管腔で共鳴して各母音に特有な部分音が強調され,所謂フオルマントを構成すると云う考え方に本質的には一致するものと思われる。
母音の波形は各々に特有な略々周期的な波形でこれらの波形の一周期について調和分析を施しスペクトルを求めると,各母音に特定な部分音が強調されている。この部分音が母音を特色づけるフオルマントであり,このフオルマントの相違によつて各母音が區別されて聽えるのである。尤もこれが母音を特徴づける總てではないことは勿論であるが,少くとも最も重要な要素と考えられる。この母音曲線の調和分析の方法は今日迄專ら多く用いられ,日本語母音についても小幡氏等によつてそのフオルマントが求められた。
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