展望
ヴィールスと遺傳子
守山 英雄
1
1鎌倉市大町湘南研究所
pp.130-135
発行日 1949年10月15日
Published Date 1949/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905469
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1.
最近生物學の問題で最も活溌な動きを見せ魅力にとんだ展開をとげつゝあるものゝ中に,少くともヴィールスと遺傳子の問題があると云つても云い過ぎではなかろう。ヴィールスは電子顯微鏡の美しい寫眞の中にそのさまざまな姿をあらわしているが,一方遺傳子もつい近頃おなじく電子顯微鏡でその正體がつかまれたという話が傳わつている。
周知の様にヴィールスとは濾過性病原體とも云われ普通の細菌よりも小さく素焼きの濾過器を通過し得る一群の病原體のことであり,遺傅子とは細胞核中に存在してその生物の遺傳形質を決定支配する因子をいうのである。かような説明からではその間に密接な關係があるなどゝは到底考えられないが,既に今より20年以上も前にMuller,1)Bail2)などはヴィールスは遊離している遺傳子と見なすべきであるという大膽な且すばらしい意見を發表している。私3)も研究對象としてはじめてヴィールスと取り組み出した十數年前からその類似點に異常の關心をよせるようになつていた。ヴィールスをはじめて結晶として分離したことによつて有名なStanley4)も近頃その兩者の深い關連につき論じているようである。
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