科學隨想
科學研究者の自由について
暉峻 義等
pp.26
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905438
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われわれが今日,研究の仕事を果してゆく世界は,いたるところ,自由と平等との熾烈な要求のおこつてゐる世界である.われわれの仕事は,自由と平等とを願望する人間,集團のなかで進められてゆく.われわれは先づ,「自由とは何か」ということを,自らの立場においてよく考え,われわれ自身が,まづ自由をもち得る能力をもち,自由な研究者になることが,われわれの研究を進めてゆく上に,極めて重要なことである.
われわれはわれわれ自身のもつてゐる個有の性質を表現する能力の發展と,その活用とによつて,社會的進歩に貢獻するところなくてはならない.他人のため,世の中のため,自己の性質を生育發展させて,自らの能力を以て,他の人々の中に生きる能力をもたねばならない.そしてかかる能力が廣め深められるほど,研究者としての價値は高まり,その社會性は大きくなる.そしてかかる研究者こそ,かれが最も自由に生きていることの證左ではないであらうか.
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