話題
トランスサイトーシス
高橋 豊三
1
,
満田 年宏
1
,
奥田 研爾
1
Toyozoh Takahashi
1
,
Toshihiro Mitsuda
1
,
Kenji Okuda
1
1横浜市立大学医学部細菌学教室
pp.161-164
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904981
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細胞表面の腫瘍マーカーや,レセプターなどに関しては,近年かなりのことがわかってきたが,レセプターが受けた信号が細胞内へ伝達される機構に関しては未だにわかっていない。また,膜タンパクとしてのレセプターが,ただ単にリガンドと結合するという機能だけでなく,細胞という一つの環境を舞台に運搬役をつとめ,細胞内の特定の経路をたどってリガンドを運搬する機能を有していることが近年明らかになりつつあるが,その詳しいメカニズムに関しては未だに不明な点が多い。換言すれば,細胞表面の物質の性状や分子論的なことはわかってきたが,それらの詳しい機能や細胞内物質との関連性などに関しては未だにわからない点が多いのである。それらの意味をふまえて今回,トランスサイトーシスに関して,最近話題になっていることを紹介したい。膜タンパクは細胞の特異的な位置に配位するように仕組まれている。たとえば極性上皮細胞のゴルジ体で産生された膜タンパクは,頂端部もしくは側・底部表面に輸送される(Rindler,et aL.:JCB,98:1304-1319,1984)。
一般に膜タンパクは,多種多様な細胞でよく見出されるように,受容体の介在するエンドサイトーシス(receptor-mediated endocytosis)という過程によって特定の位置に選別されている。この場合,被覆ピットの中にレセプターが選択的にクラスターにされ,エンドサイトーシスによりエンドゾームへ輸送される。
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