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第5土曜特集 遺伝統計学の新潮流――新規創薬・個別化医療への挑戦
遺伝統計学とシングルセル解析
シングルセルRNAシーケンス
-――宿主と病原体の複雑な相互作用を明らかにする
Single-cell RNA sequencing
――Illuminating the complexity of host-pathogen interactions
ムハマド アル カディ
1
,
奥崎 大介
1
Mohamad AL KADI
1
,
Daisuke OKUZAKI
1
1大阪大学免疫学フロンティア研究センターヒト免疫学(単一細胞ゲノミクス)
キーワード:
感染症
,
細菌
,
シングルセルRNAシーケンス(scRNA-seq)
,
サルモネラ菌
Keyword:
感染症
,
細菌
,
シングルセルRNAシーケンス(scRNA-seq)
,
サルモネラ菌
pp.1162-1166
発行日 2024年3月30日
Published Date 2024/3/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu288131162
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細菌はエフェクタータンパク質を使って宿主細胞を操作し,定着を確立して免疫システムを回避する.このような細胞間相互作用は統一されておらず,宿主細胞の反応は細胞の種類によっても,また同じ細胞種であってもさまざまである.しかし多くの研究では,バルクRNAシーケンス(bulk RNA-seq)のような,組織/サンプル内の全細胞からのシグナルを測定する方法を用いており,その結果,細胞の挙動を平均化してしまって多様性を覆い隠す可能性が想定される.その後,2009年にシングルセルRNAシーケンス(scRNA-seq)により胚盤胞の最初のトランスクリプトーム解析が行われたことから極めて重要な知見を得ることになり,scRNA-seqの採用が飛躍的に増加した.この急増は,継続的な進歩と市販キットの普及も起因していると考えられる.scRNA-seqは宿主と病原体の相互作用を調べるのに理想的な方法として登場し,宿主と病原体間の相互作用の微妙な結果を明らかにすることが可能となった.本稿で述べる研究では,感染時に観察されるさまざまなマクロファージ内の遺伝子応答がサルモネラ菌感染に起因していることが予想された.宿主のscRNA-seqは大きな進歩を遂げたが,同時に技術的な問題から感染した細菌の検出は妨げられてきた.一方で,scRNA-seqの臨床への応用を拡大する努力もなされており,結核に関連するような感染転帰の予測に努めている.
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