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特集 細胞生物学実験マニュアル
核・染色体分析
ヒトの遺伝子地図作成
Human gene mapping
武部 啓
1
Hiraku Takebe
1
1京都大学医学部分子腫瘍学教室,放射能基礎医学教室
pp.295-296
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904879
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■ 概要
遺伝子地図作成とは,染色体上に遺伝子がどのように配列されているかを明らかにすることで,歴史的にはショウジョウバエ,大腸菌,ヒトでそれぞれ新しい手法が開発されてきた。ショウジョウバエでは組換えによる乗り換え(crossing over)の頻度から遺伝子間の距離を推定する遺伝子地図と,主として唾腺染色体の観察から遺伝子地図に対応させた染色体地図を合わせて遺伝子の配列が決定され,この方法は他の生物にも基本的にすべて適用できると考えられていた。大腸菌では,雄株(Hfr)から雌株(F−)への染色体の導入を人為的に中断させて,それによって,どこまで遺伝子が導入されたかを推定する方法で解析され,環状の染色体を100分した遺伝子地図(たまたま全染色体を導入するのに100分かかる)が作成されている。ヒトでは,任意交配ができないこと,染色体数が多いことなどから,ショウジョウバエ型の手法ではほとんど遺伝子地図作成は不可能であった。ところが以下に述べるような新しい手法の導入により,ヒトの遺伝子地図作成(human gene mapping)が可能となったばかりでなく,現在では医学,生物学におけるもっとも注目を集める研究分野になっている。ここでは,古典的なショウジョウバエ,大腸菌の遺伝子地図作成にはこれ以上ふれず,もっぱらヒトの遺伝子地図作成法1)の概要を述べたい。
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