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連載講座 形態形成の分子生物学
形態形成の統御因子としての細胞接着分子
Cell adhesion molecules: A controlling factor of morphogenesis
竹市 雅俊
1
Masatoshi Takeichi
1
1京都大学理学部生物物理学教室
pp.149-153
発行日 1985年4月15日
Published Date 1985/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904715
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形態形成という高次で複雑な現象を,分子の言葉で語りたいというのが発生生物学者の長年の夢である。昨今の新しい方法論の展開と技術の進歩によって,この夢がひょっとしたら実現するかもしれないという兆が見えてきている。とりわけ,昆虫(ショウジョウバエ)のhomeoboxを中心とした形態形成制御遺伝子の分離の成功1),あるいは,RNA分子に個体の体軸を決める情報が収められているといった発見2)などは,形態形成機構の本質に迫る成果であろう。
脊椎動物を用いた実験系では,任意の形態形成現象の解析のために突然変異個体を利用できるチャンスが極端に限られており,昆虫材料で成功したような遺伝学的解析は駆使できない。そこで,正常な発生過程の中から解析可能な現象を選びだし,その分子的背景を探るという研究法が一般的である。そのようなアプローチの中で,もっとも分子レベルでの成果を収めているのが,本論で紹介する接着分子の研究である。細胞を結びつける接着分子は,多細胞体形成にとって不可欠の要素で,その機能と形態形成との間には密接な関わりがあるはずである。これらの分子の遺伝子解析が進めば,いずれショウジョウバエなどを用いた研究成果との間に接点が見出され,形態形成機構の総合的な理解が得られることを期待しつつ話を進めたい。
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