Japanese
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特集 リン酸化
総説
がん化とチロシン選択性蛋白質キナーゼ
Transformation and tyrosine protein kinases
小林 信之
1
Nobuyuki Kobayashi
1
1京都大学ウイルス研究所
pp.276-284
発行日 1982年8月15日
Published Date 1982/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903548
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細胞癌化の要因としてはさまざまなものが存在するが,その1つに腫瘍ウイルスによる発癌がある。腫瘍ウイルスはDNAを遺伝子としてもつSV40, Polyoma等で代表されるDNA腫瘍ウイルスと,RNAを遺伝子としてもつ,Rous sarcoma virus(RSV)で代表されるRNA腫瘍ウイルス(近年はレトロウイルス:reverse transcriptase containing virusと呼ばれるようになって来ている)とに分ける事ができる。これら2つのグループのウイルスは一見非常に異なるが,両者は宿主細胞を癌化する過程において非常に近似した機構をもっている。両ウイルスがその遺伝子上に細胞癌化を直接に引き起こすいわゆる発癌遺伝子(onco gene)を持っているのもその1つである。しかしながら.一口に腫瘍ウイルスの発癌遺伝子と言っても,さまざまな形で存在し,はたしてこれらの発癌遺伝子がそれぞれ異なる独自の機構で細胞を癌化するのか,あるいはある程度ないしはヒト癌をも含めたすべての癌細胞に共通な機構によって細胞癌化を引き起こすのかと言う事に関しては現在まで明確な答えは得られていない。しかし,ここ5年程の間に,今まで同定された腫瘍ウイルスの発癌遺伝子産物の中に蛋白質のリン酸化酵素,すなわち,フロティンキナーゼ活性を有するものが存在する事が明らかになって来た。
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