Japanese
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特集 赤血球膜の分子構築
総説
赤血球膜糖タンパクの構造と機能
Structure and function of erythrocyte membrane glycoproteins
中島 元夫
1
,
辻 勉
1
,
大沢 利昭
1
Motowo Nakajima
1
,
Tsutomu Tsuji
1
,
Toshiaki Osawa
1
1東京大学薬学部生体異物免疫化学教室
pp.211-221
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903392
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はじめに
多細胞における種々の細胞間相互作用の機構とその意義を解明しようとする細胞社会学的研究は,細胞表面の分子性状の解明を必要不可欠とする。そこで,細胞膜構築とその構成成分の化学組成の研究が盛んに行われている。特に細胞膜系の糖タンパクは,いずれも細胞表面に露出して存在しており,細胞表面特異性や,細胞と細胞,細胞と外環境因子の相互作用における役割が注目され,その生化学的研究の進展にはめざましいものがある。しかし,細胞周期をもち,様々な細胞活動を行っている細胞の膜糖タンパクは一定の標品の調製が困難で,構造解析に供し難い。そのため多年にわたり,タンパクの代謝生合成を行わず,多量に均一の膜標品が得られる赤血球の膜が細胞膜モデルとして取り扱われ,その糖タンパクが詳細に解析されるに至った。
赤血球膜は,還元剤のβ-メルカプトエタノール存在下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動1)にかけると,10数本の主要なタンパクのバンドが観察される2)。これらのうち,クマシーブルーで染色されるband 3と呼ばれるものと,過ヨウ素酸酸化シッフ試薬(PAS)染色陽性のPAS-1,2,3,4などが糖タンパクである。これらは膜内在性で,膜を貫通して存在する2〜6)ことから赤血球膜における機能が注目され,また臨床的にも興味ある抗原性を有することから,その精製と構造解析が最も精力的に進められている。
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