Japanese
English
特集 赤血球膜の分子構築
総説
赤血球膜の超微形態
Ultrastructure of the erythrocyte membrane
月田 早智子
1
,
石川 春律
1
Sachiko Tsukita
1
,
Harunori Ishikawa
1
1東京大学医学部解剖学教室
pp.188-197
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903389
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生体膜の実体が電子顕微鏡によってはじめて可視構造として把えられて以来,その微細構造は分子構築との関連で論議されてきた。いろいろな膜モデルが提唱されてきたが,一般的には,生体膜は脂質2重層を基本として,それに蛋白質が組み込まれているものである。脂質中の蛋白質の存在様式については,SingerとNicolsonによる「流動モザイクモデル」1)が広く受け入れられている。生体膜のもついろいろな機能を考えるとき,その分子構築が一様であるはずはなく,実際,電子顕微鏡で見る生体膜も極めて多彩な微細構造を示す2)。生体膜の分子構築を解明する努力は,限られた種類の膜についてではあるが,確実に進められている。その代表的な例が赤血球膜である。
赤血球は,ヘモグロビンによる酸素運搬という重要な役割を担っている。とくに,哺乳類の赤血球は,核や糸粒体などの細胞内オルガネラを欠き,大量のヘモグロビンを入れた袋という単純な形態をとる。この細胞は,酸素運搬という機能を最大限に発揮できるよう特殊に分化した細胞であり,その表面膜,すなわち形質膜も特殊化した膜であるはずである。生体膜研究にこの膜が有利であるのは,ヘモグロビンを溶血によって除くだけで,純粋な形質膜が容易かつ大量に,しかも断片化せず,ゴースト(ghost)の形で調整できることによる(図1)。
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