Japanese
English
特集 微小管の構造と機能
総説
微小管の生化学
Biochemistry of microtubles
新井 孝夫
1
,
上代 淑人
1
Takao Arai
1
,
Yoshito Kaziro
1
1東京大学医科学研究所化学研究部
pp.269-280
発行日 1977年8月15日
Published Date 1977/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903196
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はじめに
微小管(microtubule)は直径約25nm,長さ数μ〜数10μmに及ぶ細長い管状構造のオルガネラで,その局在部位から,線毛と鞭毛の微小管,紡錘体の微小管,および細胞質微小管の三者に大別される。前二者の微小管は,それぞれ線毛・鞭毛運動および分裂時における染色体運動の機能を果たしているが,細胞質微小管の機能は多様である。細胞質微小管は,神経細胞や色素細胞のような突起をもつ細胞に多く存在して,細胞骨格としての機能とともに,物質の細胞内輸送(神経細胞の軸索輸送,色素細胞の色素顆粒の移動など)の機能を果たしている。このほか,ホルモン,神経伝達物質などの分泌の際のエクソサイトーシス,また細胞膜の流動性の制御などにも関与していると考えられている。
本稿では,最初に細胞質微小管の構成成分の生化学的諸性質を述べ,ついで無細胞系における微小管の再構成を中心として述べる。紡錘体の微小管および線毛・鞭毛の微小管については,それぞれ酒井と馬渕1)および毛利2〜4)の総説を参照していただきたい。また,微小管の生化学と再構成については,他にもいくつかの総説がある5〜7)。
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