増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅱ.機能からみたシグナル操作法
3.細胞の動態
細胞骨格(微小管系)
牧野 司
1
,
吉川 雅英
1
Makino Tsukasa
1
,
Kikkawa Masahide
1
1東京大学大学院医学系研究科生体構造学
キーワード:
細胞骨格
,
微小管
,
チューブリン
Keyword:
細胞骨格
,
微小管
,
チューブリン
pp.506-507
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200330
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微小管は2種類のチューブリン分子(αとβ)が重合して形成される直径25nmの中空のフィラメントである(図)。他の細胞骨格と同様,微小管はほぼすべての真核細胞に存在する。その機能は多岐に及び,例えば,中心体から放射状に広がる微小管はモータータンパク質(kinesinとdynein)のレールとして細胞内輸送に寄与している。また,細胞分裂の際には紡錘体を形成し,染色体分配で中心的な働きをする。また,鞭毛や繊毛では主要な構成要素として細胞遊泳運動にかかわる。更に,他の細胞骨格と共に細胞の形態維持や運動にも関与する。
微小管が前述のように多様な働きができるのは,必要に応じてフィラメント構造を形成したり(重合),壊れたり(脱重合),という柔軟性を持っているからである。この重合・脱重合は,チューブリンに結合するヌクレオチド(GDPまたはGTP)状態に依存すると考えられている。すなわち,チューブリンがGTP結合型ではフィラメント構造が安定化し重合する方向に,加水分解が起こりGDP結合型になると脱重合する方向に反応が進む。また,様々な種類の微小管結合タンパク質(microtubule-associated proteins;MAPs)によっても重合・脱重合が制御されている。
微小管の機能の多様性は,チューブリンが持つ多数のアイソフォームの存在が関係している。まず,α,βそれぞれのサブユニットに対して複数の遺伝子(isotype)があり,更にアセチル化,脱チロシン化,ポリグルタミル化などの多様な翻訳後修飾を受ける。これらのisotypeと翻訳後修飾によって,微小管は細胞内で多様な働きを行うことができると考えられる。
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