実験講座
脳切片を用いる電気生理学的実験法
山本 長三郎
1
1群馬大学医学部行動医学研究施設
pp.143-150
発行日 1972年6月15日
Published Date 1972/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902927
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最近,試験管内の遊離脳切片から,長時間にわたつて安定な電気活動を記録することができるようになつた1。この方法では脳細胞の外部環境を自由に変え得るので,脳の生理,薬理学的研究に有用であり,すでにいくつかの研究が発表されている2)20)。しかし,まだこの方法の詳細な記述がなく,時々手技についての質問を受けるので,初めての人でもできるように,注意するべき点をくわしく説明する。
要は,切片を手早く,十分薄く作ること,浮遊液を間違いなく作ること,インキュベーション中や電位記録中にいつも新鮮な液が組織にふれるようにすること,の3点につきる。電気活動を保つた切片は脳のいろいろな部位から作ることができるが大別すると,1)脳の表面に平行に切り出す場合,2)脳の表面に垂直に切り出す場合の2つがある。そのおのおのの場合で一番容易な,嗅皮質から表面に沿つて作る方法と,海馬を輪切りにして作る方法をくわしく述べることにする。他の部位から切片を作つて実験する場合にも,一応以上の2個所で習熟した上で,目的の部位に応じた独自な手技を開発されるように希望する。
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