実験講座 灌流実験法
内臓灌流
新島 旭
1
1新潟大学医学部生理学教室
pp.253-269
発行日 1969年12月15日
Published Date 1969/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902823
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I.はじめに
紀元前300年の頃Cleanthesは摘出した心臓が暫く鼓動するのを認めた,というが18),内臓器官を生体より切り離してその機能を調べたいという考えはかなり以前からあつたものと思われる。19世紀後半に至つてCyon(1866),Coats(1869)らによつて蛙の摘出心臓の灌流装置が考えられ19),温血動物の心臓の灌流はMartin(1883)によつて始めて試みられたという48)49)。その方法は改良され,Langendorf(1897)の方法へと発展している45)。これらの摘出心臓灌流実験は,同時代のRinger,Lockcらによつて開発された代用血液に負う所が大きい。この頃の報告にもすでに見られるごとく20)46),臓器灌流の目的は臓器を生体の調節機構より切り離し,できるだけ生理的な環境下において,その機能を解明することまた環境条件を人為的に変えることによりおこる反応を示標として機能の解明を計ることにあるといえよう。生体から切り離すことによつて薬物の二次的な作用をある程度除くことも可能である所から,臓器灌流は薬理学の実験にもしばしば応用される。臓器灌流実験の目的をさらに細別してみると,灌流条件下において,その臓器固有の機能を研究するために実験を行なう場合,臓器支配血管の動態や血流の動態を調べる場合,その臓器の神経支配を研究する目的で行なう場合などが考えられる。
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