実験講座 細胞内成分の分画・1
酵母のミトコンドリアの調製法
萩原 文二
1
,
川口 久美子
1
1大阪大学医学部生化学教室
pp.208-212
発行日 1967年8月15日
Published Date 1967/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902737
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酵母はウシの心筋と共に初期の呼吸系の研究に最もよく用いられてきたものであつて,1925年にKeilin1)がチトクロームを再発見したときすでに研究材料となつており,1930年にはこれからチトクロームcが抽出精製されている。また1929年にWarburg2)がphotochemical action spectrumによつてチトクロームオキシダーゼ(当時彼はこれをAtomungs fermentと称していた)がヘム蛋白質であることを発見した有名な研究も酵母について行なわれたものである。また,酵母は単細胞生物にもかかわらず,高等生物と同様の世代の交代があり遺伝学的にも興味のある材料であり,事実呼吸系に関してはきわめて容易にいわゆる呼吸欠損変異株を作ることが可能で,これについてはEphrussi3)4)以来数多くの研究が行なわれている。このような研究の発展に伴つて酵母の細胞分画の試みもある程度はなされてきたのではあるが,良質のミトコンドリア(Mt)を得る方法は比較的最近まで報告されていなかつた。これは酵母が強じんな細胞壁をもつていて,これを破壊してMtをとり出すときには同時にMtが破損を受ける可能性が高いためである。筆者らの研究室においては,まず細胞は破壊するがそれよりもはるかに小さなMtには破壊力があまり及ばないような特殊なホモゲナイザーを考案して,これを用いて比較的intactなMtを調製することができた5)。
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