抄録
「生体運動機構」セミナー(3)
Annemarie Weber
1
,
酒井 敏夫
2
,
R. J. Podolsky
3
,
名取 礼二
2
,
J. W. S. Pringle
4
1Institute for Muscle Disease
2慈恵医大生理学教室
3National Institute of Arthritis and Metabolic Diseases, National Institutes of Health
4Department of Zoology, University of Oxford
pp.148-149
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902682
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- 文献概要
□ 収縮弛緩サイクルの調節と小胞体
筋原線維の弛緩に関する諸問題
十分量のMgとATPが存在する時にのみCa除去によつて,無傷の筋原線維(江橋の蛋白を含んでいる)の弛緩が起きる。Mgは筋原線維からCaを引き離す(pCaが8のとき,Mgを加えないならば,筋原線維はCaで半飽和に保たれている)のに必要なだけでなく,結合Caの大部分が除去されたあとにシネレシスが起きるのを妨げるのにもまた必要である。筋原線維のシネレシスは,0.5〜1.2μmole/g‐筋原線維の結合Caがある場合Mg存在下では完全に阻害されるが,Mgを加えない場合は85%の程度のシネレシスが起き得る。ATPの濃度が4μMよりも低い場合は,ATPase活性はCa除去によつて阻害されることは決してない。0.1mM ATPのときにのみATPase活性は最低値に達する。同じようにATP濃度が10μMに達するまでは,Caがあろうとなかろうと,部分的シネレシスの起こる程度は同一である。Caのある場合とない場合のATP結合量を比較検討して,われわれは丸山とともに,Caがない場合の方がATP結合量が多いことを見いだした。このATP結合の増加は,江橋によつて示されたように,トリプシン処理によつて弛緩能力を失つた筋原線維では見られない。
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