増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
1.検査の考えかた
1)生体の止血機構
藤巻 道男
1
1東京医科大学臨床病理学教室
pp.118-125
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906495
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はじめに
血液は生体内において循環し,その流動性を保っており,血液凝固の促進因子としての前駆因子(procoagulants)と阻止因子(inhibitors)とが調和された状態にあるため,血管内凝固は起こりにくい.また,生理的状態では血管が傷害されて出血が起こっても,直ちに止血される.この止血機構(hemostasis)には,①血管の収縮および血管周囲組織の状態,②血小板の粘着・凝集・放出反応,③血漿凝固因子の機能,④フィブリンを溶解させる線溶現象,⑤凝固や線溶の過剰な反応を抑制する阻止因子,これらが相互に関与しているのである.これらの機構が互いに動的平衡(homeostasis)を保ち,血管を中心として調和した機能を営んでおり,これを血管統合性(vascular integrity)という.この機能の均衡の破綻として因子の欠損や活性化が起こると,出血や血栓が発現し,止血異常としての凝血障害症(coagulopathy)となる.このような生体の止血機構について,その概略を述べる.
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