Japanese
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特集 加齢の克服―21世紀の課題
第2部 総説
Ⅰ.自然老化
老化によるシグナル伝達異常―長寿命遺伝子Shcの変異とその周辺機能
Signal transduction abnormality in aging: genetic mutations and gene expression changes of Shc, a gene of longevity
森 望
1,2
Nozomu Mori
1,2
1国立療養所中部病院長寿医療研究センター分子遺伝学研究部
2科学技術振興事業団戦略的基礎研究「脳を守る」研究
pp.408-414
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902427
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老化とともに生体の様々な機能が低下する。その原因は概して,細胞の応答性の障害である。細胞応答の主体はシグナル伝達に帰結される。したがって,老化による種々の生体変化の主因はシグナル伝達の変化としてとらえることが可能である。興味深いことに,昨今,線虫やショウジョウバエなどでの寿命制御の中核が,インスリン様受容体からPI3KとAKTなる二つのリン酸化酵素を経てFKHR型転写因子へつながるシグナル伝達経路にあることが判明して,老化制御,寿命制御へのこのPI3K-AKT-FKHRシグナルの重要性がほほ確立された。一方で,高等哺乳動物の寿命制御にはShc系のリン酸化チロシンアダプター分子の酸化ストレス応答に関する活性が関係することも明らかになった。寿命制御の進化的共通基盤が様々に議論されながら,分子生物学的には,下等生物と高等生物との間で,老化・寿命制御シグナル系からの理解は必ずしも完全にマッチしたものではなかった。最近になって,FKHR系分子とShc系分子が酸化ストレス下に連関した動きをすることがわかり,ようやく,動物の寿命制御シグナルの共通基盤が見えつつある。さらに,その制御の中心となるのは脳神経系であるらしい。
本稿では,これらの最近の動向を概観し,さらに,神経系で機能するShc系分子の最近のわれわれの研究成果もふまえて,老化と寿命研究におけるシグナル伝達の問題点を考える。
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