特集 病気の分子細胞生物学
12.眼疾患
小口病
村上 晶
1
Akira Murakami
1
1防衛医科大学校眼科
pp.488-489
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901774
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[疾患概略]
小口病は「はげかかった金箔様」と表現される特有の色調を呈する眼底が認められ,長く暗順応下におくとその色調が正常化する現象を伴う先天性夜盲である。この疾患は1907年に小口忠太により報告されて以来,日本では1994年までに文献上245症例の報告があるが,ほかの民族での報告は少ない1)。常染色体劣性遺伝を示し,しばしば家系内に近親婚が見られる。症状は夜盲であるが,しばしば自覚症状に乏しく,偶然にほかの疾患の治療や健康診断の際に眼科医が発見することも多い。
典型例では視力は良好で,視野は正常である。眼底が「はげかかった金箔様」と表現される,黒ずんだ金色,黄色,灰白色などの異常な色調を呈する。色調の異常は必ずしも眼底全体ではなく,後極部や周辺部の一部に限られることもある。2~3時間,暗室にいてもらって暗順応を行うとこの変色は消える(水尾―中村現象)。暗順応検査で第一次暗順応は正常に認められるが,第二次暗順応は3~4時間をへて正常あるいは正常近くに達する(正常では30分以内)。網膜電図(electroretinogram;ERG)は診断に有用で,full-field ERG検査でsingle flash ERGは燈negative type ERGを示し,杆体機能の異常が観察されるが,錐体機能を反映するphotopic ERGは正常である。
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