特集 病気の分子細胞生物学
8.代謝・栄養障害
ウィルソン病
寺田 邦彦
1
,
杉山 俊博
1
Kunihiko Terada
1
,
Toshihiro Sugiyama
1
1秋田大学医学部生化学第一講座
pp.455-456
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901762
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[疾患概略]
銅は生体にとって必須の微量金属であるが,細胞内に過剰に存在すると,細胞膜・蛋白・核酸などに傷害を与え毒性を発揮する。この銅の毒性によって引き起こされる疾患としてウィルソン病がよく知られている。ウィルソン病では,出生直後より肝臓に銅が蓄積し,毒性レベルに達すると肝炎が発症してくる。さらに,傷害肝から放出された銅が,脳・腎臓・網膜などに沈着し障害をもたらす。肝臓への銅の異常蓄積は,肝外への銅排出の低下,すなわちセルロプラスミンを介した血中への銅分泌および胆汁への銅排泄が低下しているために起こる。
この疾患は常染色体劣性形式で遺伝し,発症率は1/30,000とされている。D-ペニシラミンなどのキレート剤を早期から投与すれば予後は良好であるが,適切に治療されなければ若年期に肝不全のため死亡する。
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