Japanese
English
特集 時間生物学の新たな展開
概日リズムと細胞内信号系
Intracellular Signaling in the Biological Clock
守屋 孝洋
1
,
柴田 重信
2
Takahiro Moriya
1
,
Shigenobu Shibata
2
1早稲田大学人間総合研究センター
2早稲田大学人間科学部薬理学講座
pp.200-206
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901694
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哺乳類において,1日の生理リズムを生み出す体内時計は視床下部の視交叉上核に存在することが,脳局所破壊,脳移植および電気生理学的実験によって明らかにされている。視交叉上核は約1万個の神経細胞により構成される左右一対の神経核であり,その神経活動は昼間に高く,夜間に低いという明瞭な日内リズム性を示す。また,この神経活動リズムは分散培養された個々の神経細胞でも観察されることから,体内時計の最小単位は一つ一つの神経細胞内に存在していることが判明した。
一方,最近の分子生物学手法の発展に伴い,体内時計を構成する分子的基盤が明らかになりつつある。哺乳類でも,ショウジョウバエの時計遺伝子perのホモログ(per 1,2,3)がクローニングされた。これらの時計遺伝子はその転写,翻訳,翻訳産物の核内移行,自身の転写抑制といった,いわゆるネガティブフィードバックループを形成することによって約1日のリズムを生み出すことが報告されている。さらに,per遺伝子の遺伝子上流に作用してその発現を惹起するbmal 1およびclockも単離され,ネガティブフィードバックループを回転させる駆動力としての役割が注目されている。このような時計遺伝子によって構成される体内時計の最小マシーナリーからは,その生み出す時刻情報が細胞内全体に伝達され,神経発火やエネルギー代謝などの神経活動リズムとして表されることは容易に想像できる。
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