特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅴ.その他
パーキンソン病治療薬
山本 光利
1
,
小川 紀雄
2
Mitsutoshi Yamamoto
1
,
Norio Ogawa
2
1香川県立中央病院神経内科
2岡山大学医学部分子細胞医学研究施設神経情報学部門
pp.518-520
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901656
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
中枢神経疾患の治療薬の中で,パーキンソン病治療薬はもっとも理論的に成功している。病態や治療薬を考える上では,シナプス部における神経伝達物質と受容体の変化の把握が重要である。パーキンソン病の主病変は黒質―線条体のドーパミン(DA)ニューロンの変性脱落であるが,それ以外にも線条体での相対的なアセチルコリン(ACh)系の機能亢進,さらには,陳旧症例におけるdopamine-β-hydroxylase低下によるノルアドレナリン(NA)の低下など多彩な生化学的変化が知られている。以下に作用機序による治療薬の分類に従い概略を述べる。
本病の薬物療法はDA補充療法から始まり,神経保護薬,さらには神経修復薬をめざして研究が行われている。DAアゴニストは実験系では神経保護作用を示唆しているが,臨床では直接的な証明はいまだされていない1-3)。DAアゴニストは臨床的にはlevodopa使用量を削減できる薬剤として,また,levodopaに伴う問題点の克服するための薬物と現実には理解してよい。本病は基本的には徐々に進行していく。このためDAの補充療法のみでは十分な薬効が得られがたくなる。こうした観点から,本病の薬物療法はできるだけ効果をあげ副作用を少なくするために,作用機序の異なった薬物の「低用量・多剤併用」が基本である。本稿では開発段階にあるパーキンソン病治療薬についても概略を述べる。
Copyright © 1998, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.