特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅱ.チャネルに作用する薬物
細胞内Ca2+放出チャネル
cADPR/Ryanoid-ICR
村山 尚
1
,
小川 靖男
1
Takashi Murayama
1
,
Yasuo Ogawa
1
1順天堂大学医学部薬理学教室
pp.424-426
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901627
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受精時には卵細胞の細胞内カルシウムイオン(以下,Ca2+)濃度が急激に上昇し,これが受精後のさまざまな反応の引き金となることが知られている。このCa2+上昇は細胞内Ca2+ストアからのCa2+遊離であることがわかっていて,ハムスター,マウスの卵ではイノシトール-1,4,5-3リン酸(IP3)誘発性Ca2+遊離(IP3-induced Ca2+release;IICR)機構が主要な経路であることが示されている。これに対して無脊椎動物のウニ卵では,IICRの阻害薬であるヘパリンを注入しても依然としてCa2+上昇が見られることから,ほかの機構を介している可能性が示唆されていた。最近になってサイクリックADPリボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)とニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinic acid adenine dinucleotide phosphate;NAADP)という2種類の物質が同定され,それぞれがCa2+遊離作用を持つことが明らかとなった1)。本稿ではcADPRおよびNAADPによるCa2+遊離機構について概説し,関連する薬物について述べる。
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