Japanese
English
特集 プロテインキナーゼCの多様な機能
学習とPKC
PKC in learning
坂口 博信
1,2
Hironobu Sakaguchi
1,2
1獨協医科大学第2生理学教室
2科学技術振興事業団さきがけ研究21「知と構成」
pp.274-277
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901586
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現在,生物のもつ学習し記憶するという能力は,脳神経系の可塑的な変化すなわち神経回路を構成するニューロン間のシナプス伝達効率の変化,またはシナプスの新生・退化によって生じるシナプス可塑性によるものであると考えられている。このシナプス可塑性の基礎となる最も重要な生化学反応は,シナプス機能に関与する蛋白質のリン酸化である1)。リン酸化を担うプロテインキナーゼ(PK)は,神経伝達物質受容体,イオンチャネル,伝達物質放出装置などのシナプス機能に関わる蛋白質を直接リン酸化してシナプス伝達効率を変化させたり,転写因子のリン酸化により遺伝子を発現させ,シナプス新生・退化などの形態的変化を引き起こすことによりシナプス可塑性に寄与する。
特に,PKCは細胞内シグナル伝達機構における最も重要なリン酸化酵素として知られ,哺乳類海馬の長期増強2)をはじめとする種々の動物の異なる学習系で,学習時に酵素の活性化が報告されている。PKC活性化の際には膜結合を伴うことが知られていて,ウミウシとウサギを用いた古典的条件づけ成立時3),ひよこの摂食忌避学習時に4),PKCの細胞質から膜への移行が生じることが明らかになっている。これらウミウシ,ひよこ,哺乳類の学習系とPKCに関しては,すでにすぐれた総説1-4)があるので,ここでは,鳥の歌学習臨界期のシナプス可塑性5)におけるPKCの役割に関する私の研究を中心に述べる。
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