増大特集 細胞表面受容体
●構造的特徴:1回膜貫通型◆受容体の遺伝子:NTRK
神経栄養因子受容体TrkAの三次元分布
西田 倫希
1
Nishida Tomoki
1
1大阪大学 超高圧電子顕微鏡センター
pp.500-501
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101535
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●NGF刺激に対する分化PC12細胞の細胞内輸送
神経栄養因子の一つNGF(nerve growth factor;神経成長因子)は,神経細胞の突起伸長,生存維持などにかかわる分化誘導因子であり,その作用は膜1回貫通型受容体TrkA(tyrosine kinase receptor)と高親和的に結合することで作用する。NGFによるTrkAリン酸化は下流のシグナル分子を活性化する一方,NGF-TrkA複合体はクラスリン依存性あるいは非依存性エンドサイトーシスにより内在化され,エンドソームを経てリソソームで分解される。
筆者はTrkAを細胞膜に発現する神経系細胞株PC12をNGFで分化誘導し,NGFが分化PC12細胞内のTrkA分布に与える影響を検討した1)。酸性環境で蛍光を発するキナクリンをNGFと共に投与すると,蛍光シグナルが細胞体とバリコシティー(神経突起の途中に形成される数珠状の膨らみ)にゆっくりと集まり,蛍光強度も緩やかに増加し続け,刺激45分後には蛍光スポットは細胞全体に分布した。また,電子顕微鏡観察では,電子密度が顕著に増加したリソソームが細胞体やバリコシティーでみられた。さらにTrkAで標識されたバリコシティー数も刺激後に有意な増加を示した。以上からNGF刺激によるキナクリンとTrkAのバリコシティーへの集積は,リソソームによるTrkA分解が細胞体2)だけで起こるのではなく,神経突起のバリコシティーも関連する可能性を示した。そこで電子線トモグラフィーを使いバリコシティーにおけるTrkAの細胞内分布を検討した。
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